スクールカウンセラーだより from 一心塾

スクールカウンセラーとして勤務している学校で発行している便りです。

大事にすること、されること

魔女の宅急便』の主人公キキはあるとき魔法のホウキに乗れなくなってしまいます。一生懸命乗り方を思い出そう焦りますが、うまくいきません。小さい頃から何でもなくできていたことなのに、、、

 十代の頃は同じようなことがよく起こります。友だちと遊んだりおしゃべりすることが楽しくてしょうがなかったのに、急に話しかけ方がわからなくなったりします。生きることの意味なんて考えなくても普通に楽しくやっていたのに、何で生きなきゃならないのかわからなくなったりします。

 誰かに尋ねると、もっともらしい理由は返って来て、頭では理解できるけど前のような感覚にスッと戻るということはありません。どうかしてしまった自分にイライラするばかりです。

 キキは人間の男の子の助けを借りて必死にホウキに乗る感覚を取り戻そうとします。身体で覚えた感覚はどうやら身体で取り戻すしかないようです。ちょうど脳卒中や事故で麻痺した身体をリハビリによって感覚を取り戻すようなものなのでしょう。

 身体の感覚はわかりやすいのですが、「普通に何でもなく生きる」というような心の感覚は何をどうがんばれば取り戻せるのでしょう。

 いま私が提案できるのは、「大事にする」ことです。私は茶道を習っているときに、お点前や歩き方などの動作を大事に丁寧にすることはもちろん、茶碗などの道具、花や庭の手入れなど手や目に触れるものすべてを大事に扱うことを教わりました。こちらが大事にすることで、道具も草花も私のことを大事に思ってくれているのではないかと感じることができます。

 もし自分が誰かから大事にされていないと感じているなら、自分の方からその人を大事にするさりげないやり方を実践してみてはいかがでしょう。あいさつや笑顔から始めてみてはいかがでしょう。きっと自然の生き物や草花のように、普通に何でもなく生きるという当たり前の感覚が甦ってくると思います。