スクールカウンセラーだより from 一心塾

スクールカウンセラーとして勤務している学校で発行している便りです。

友人関係の悩み

 友人関係で悩む人は多いと思います。クラスの中に話の合う人が数人いれば楽しい学校生活を送ることができますが、あまり趣味の合う人がいないと何となくクラスに居場所がない感じになります。一人ぼっちでいると人間は気が弱くなるもので、級友同士から悪口を言われているのではないかと被害妄想的になったりします。一人ぼっちにはならないまでも話が合わなくてイライラすることもあるでしょう。

 インターネットの世界ではありとあらゆる趣味のフォーラムが存在します。話の合う仲間を探している人、自分の居場所を探している人がパソコンの裏側に大勢いることがわかります。しかしネットの世界で仮の満足を得たとしても、本当の人間関係の力を身につけることはできません。多少つらい思いをしてでも、私たちは生の人間関係の中に身を置きながら自分の心を鍛えていかなければなりません。それは勉強やスポーツで頭や体を鍛えるのとまったく同じことと考えて良いでしょう。

 スポーツで鍛えるといえば昔はとにかく“根性”でした。今はずいぶん科学的です。ヨガなどもよく取り入れられます。では心を科学的に鍛えるにはどうすればいいのでしょう。

 まず大事なのは悩みにおぼれない技術です。例えば「友だちがいない」という悩みがあるとき、それにどっぷりつかり過ぎると溺れた人ように余裕を失い、しまいには自分が消えてなくなりたいような気分になります。溺れないためには誰かに聞いてもらうことが何よりも有効です。話してアドバイスをもらうことが目的ではありません。話すことで心が悩みに対して間がおけるようになるのです。言い方を変えると、悩みや問題を客観視できるようになることが何よりも大事な技術です。話す以外では、図に表す、文章に書くなどもとても有効です。

 少し間がおけるようになったら、今度はその悩みや問題に対してきちんと向き合うこと。これが2番目の技術です。どっぷりつかっていては向き合うこともできないのですが、今なら向き合えます。しかし向き合おうとするとそれはとても辛くて、できれば目を背けたいようなことかもしれません。ゲームやテレビ、漫画で一時的に忘れていた方がストレス解消になると思うかもしれません。しかし辛くても向き合わなければ前には進めないのです。これも勉強やスポーツと同じです。何とか向き合おうとすれば、自分なりの工夫や自分なりの頑張りができるものです。それによって心が鍛えられます。心が強くなれば人間関係や居場所の問題も自然に解消するでしょう。

 もしあなたが人の悩みに応えてあげたいタイプの人なら、徹底して聴くこと、安易にアドバイスしないこと、相手が向き合うべき問題なのにあなたが代わりに向き合わないことを守ってください。悩みを持つこと、他人の悩む心に寄り添うこと、どちらも心を鍛える手段です。