スクールカウンセラーだより from 一心塾

スクールカウンセラーとして勤務している学校で発行している便りです。

困らせる人、困る人

赤ちゃんは、お母さんの注意を引くために必死に泣きます。もちろん赤ちゃんにそんな目的意識があるわけではありませんが、生きるためには泣かなければならないことを、生まれつきからだで知っているのです。

“生き抜くため”のこの能力は、10歳くらいまでは強く出てくるようです。例えば弟や妹が生まれて、お母さんの注意が新しい赤ちゃんに移りがちになると、何だかやたら目立つことをし始めたり、心配かけさせたり、忙しいお母さんをよけいに忙しくさせるものです。

でもこの生き抜くための能力は、よく裏目に出ます。注目を引くために家族を困らせて、叱られる結果に終わるからです。子どもは意識の上では叱られたくはないのですが、悲しいことに本能では、無視されるより叱られる方を選んでしまいます。そして「もっと困らせる→もっと叱られる、嫌われる」の悪循環に陥ってしまうのです。

さらに厄介なことに、子どもはこの「困らせ方」を性格の中に織り込んでしまいます。人間にとって“生き抜くこと”はそのまま“注目されること”なのですね。学校での人間関係、さらにもっと大人になってからの人間関係もこの「困らせ方」が随所に出てきます。実は本人もその性格には大いに困っているのです。長年馴染んだパターンは簡単に変えられそうもないのですが、カウンセリングで変わることもあります。

「困らせ方」にはいろいろなパターンがありますが、大きく分けると「迷惑かけタイプ」と「心配させタイプ」です。

迷惑かけタイプは、「買ってー」などと駄々をこねる、ちょろちょろする、つきまとう、兄弟や友だちにちょっかいを出して困らせる、ゲームやテレビを止めない、暴れる、片付けない、手伝わない、うそをつく、兄弟や他者の悪事を暴きたがる、などです。

心配させタイプは、身体の症状を訴える、世話をしたがる、自分を表現しない、不安そうにする、遠慮する、などです。

もともと困らせることを目的としてこのような態度を取るわけですから、親や周囲の人たちは、この態度に「振り回される」感じを持ちます。だから相手が心配させタイプであっても何となくイライラさせられてしまいます。

そして解決方法もここに見出すことができます。つまり相手が困らせにかかるなら、こちらは「困らない」ための方策をあらかじめ考えておくのです。一つだけ単純な例を挙げましょう。相手がいつも「買ってー」と駄々をこねるのであれば、店に入る前に「お母さんについてきてくれたから何でも好きなものを買っていいよ。ただし150円までだよ。」と言います。守れたら店を出たとき褒めてあげます。相手を傷つけず、認め、そして褒めることができる方策を見つけられれば、相手はあなたに対する態度を改めるでしょう。その方策についてはカウンセリングの中でいろいろ考えていきます。

誰に対しても態度を改めるには、本人の気づきが必要です。しかし気づかせようと思ってズバっと指摘するのは勧められません。やはりカウンセリングしながら少しずつ自分で気づくのが一番でしょう。自分の性格でお困りの方、家族や友だちの態度にお困りの方、どうぞカウンセリングにいらしてください。