スクールカウンセラーだより from 一心塾

スクールカウンセラーとして勤務している学校で発行している便りです。

心の成長を計る3つの尺度

 

 人の心の成長について3つの観点から眺めると、良く理解できるかもしれません。

最初は「元気度」または「心のエネルギー」という観点です。少し自分自身を感じてみれば、今の自分の元気度を0~100%の数字で表現することができるでしょう。勉強でも仕事でも、元気度が80%を超えるようでなければ集中して取り組むことはできません。栄養や睡眠は足りているのに元気度が60%を下回っていると感じられるときは、居心地の悪さ、理解されない感じ、迷いなどの要因があるのでしょう。

元気度回復の鍵は察することです。それによって「理解されない感じ」は解消され元気が出ます。大人はぜひ子どもの心を察してやって下さい。「元気出せ!」では元気度はますます下がります。自分で自分の状態を冷静に察することでも少しは元気が出ます。自分自身を察することと、子どもを察することはほぼ同じ意味を持つと考えて下さい。なぜなら誰の中にも純粋な子どもは住み続けているからです。

二つ目は「自立度」という観点です。人間は頼れるものがある限りはそれに頼っていたいものです。食事を作ってくれる人がいる限りは、なかなか自分で作ろうとはしないものですし、お金をくれる人がいる限りは、自分で稼ごうとはしないものです。“頼れない”環境になって初めて“仕方なく”自立するのが人間なのかもしれません。特に元気度の低い人はそういう傾向にありますが、元気度の高い人は、頼れる環境であってもそれに頼らず自立しようとします。それは赤ちゃんがハイハイから立ち上がって歩き始めるように自然なことなのです。

家族の中でも学校や社会の中でも、私たちはお互いに助け合いながら暮らしています。自立度の高い人はそのことを理解し、人を助けることを惜しみません。また支え、支えられている実感が自分自身の元気度を高めることを知っています。しかし自立度が低く依存の強い人は支えられていることを自覚できないため、人のために動こうという意識も低く、家族や近しい人に甘えっぱなしです。すると支える側はしびれてきた腕をときどき休めたくなります。そのとき依存の強い人は「~してくれない」という不満をもち、さらに元気度を下げてしまうのです。そして元気がなくなるとさらに甘えたくなります。

自立度を上げるために家事を積極的に行ったら良いです。生活に密着したことこそ大事です。そして家族の役に立っているという実感を持つことが何より大切です。

三つ目は「マナー度」です。例えば子どもが「おなかが痛い」と訴えるときに、「大したことないでしょ。がんばって」と答えるのは良いマナーとは言えないかもしれません。お互いが気持ち良く暮らすための思いやりのある言動や態度がマナーです。それは教えられたり、自分で考えたりして一つ一つ身につけます。マナーが身につく度に心が成長すると考えてよいでしょう。そしてマナーは人を元気にしたり、自立させたりする力を持ちます。

自立している人はマナーを素直に身につけやすいのですが、依存の強い人は頭でわかっていても、実際にはできないことが多いようです。その人にとってはルールやマナーより、依存することの方が重要だからです。

元気度、自立度、マナー度は相互に関連していますが、それぞれ別の尺度です。それぞれに高めてやりたいものです。