スクールカウンセラーだより from 一心塾

スクールカウンセラーとして勤務している学校で発行している便りです。

便利さの落とし穴

 生き物は環境に適応する努力をしないと滅びてゆきます。ケータイ、ゲーム、インターネットの時代になって、若い人がさっとそれに適応できるのは、これは本能的なことなんだろうと思います。
 しかし使わない能力が衰えるのも生き物の宿命です。特に人間は生活の便利さを限りなく追求して行った結果、昔に比べてずいぶん「生きる能力」を衰えさせてしまいました。例えば隣近所と協力し合わなければ生きて行けない時代には、必然的に人と関係を結ぶ能力が養われますが、今は家族以外の他人を思いやったり、逆に助けてもらわなければならない機会が減った分、「人間関係力」は低下しています。
 「努力や工夫をしなきゃならない環境」が人を育てるのです。子どもが家の手伝いをしないと生活が維持できない時代なら、子どもは手伝いすることに疑問をはさまないでしょう。ゲームがない時代なら工夫して遊ぶしかないでしょう。テレビがない時代なら他の娯楽を求めるでしょう。
 子どもは時代時代に適応しているだけなのです。その意味でゲームばっかりやってる子、メールばっかり打ってる子もそれなりにがんばって適応しているわけです。もしそれを苦々しく思うなら、別なことにがんばらなきゃならない環境作りを大人の側でしなければなりません。口でうるさく言うのはただ環境を悪化させるだけです。
 いつの時代も人間は工夫します。便利な時代になっても、今度はそれに対抗する工夫が必要になります。便利さに甘んじているだけでは人間は衰える一方です。しかも便利な時代はこの重大な事実に気づきにくいのです。ぜひご用心下さい。