スクールカウンセラーだより from 一心塾

スクールカウンセラーとして勤務している学校で発行している便りです。

心の発達と無意識

 小学生のA君は片付けが苦手で、家でも学校でも叱られてばかりいました。でもA君はなんとも思っていません。「片付けのことなんか知らん」と思っています。A君にとって大事なのは友だちと遊ぶこと、そしてゲームです。

「どうしてあんたは何度言ってもわからないの!!」

お母さんが家でキレると、A君は「クソババア」と言って弟の頭を叩きます。

 さて、どうしてA君はこれほど言われても片づけないのでしょうか?

 

 答えは、「子どもは叱られると、脳のブレーカーが切れることがあるから。」

 人間は脳に大きな負担がかかると自動的にブレーカーを切って、心が傷つかないように守ろうとします。無意識的な働きなのです。大人の場合は心が発達していますから多少の負担は耐えるのですが、子どもの心は未熟ですから、わりとすぐにブレーカーが切れます。

 ブレーカーが切れているのに、さらに叱れば心が傷つきます。マイナスの感情が心の底に溜まっていき、それは悪いことに、友だちや兄弟・姉妹などに発散されがちです。またブレーカーを切らざるを得ないような叱り方をする人に対して、子どもは信頼の糸を切ってしまうかもしれません。すると後は損得のつながりになります。ちょっと、というか、かなりさみしい話ですね。

 ブレーカーは、穏やかにしていればまたスイッチがもとに戻ります。ただ、心が傷ついている場合は、戻るのに時間がかかります。

 

 子どもの行動を正そうとするときに、大人はどう接したら良いでしょうか。

 それには、子どもの理解力で理解できる説明をする必要があります。それによって子どもの心が発達します。会話の例を載せておきましょう。

母「A君は、きれいに片付いているのと、散らかっているのと、どっちが良いかな?(やさしい言い方で)」

A「片付いていない方が、すぐに遊べるから、その方がいい。」

母「そうかあ、それで片づけたくなかったんだ。でも片付いていないとお母さんは掃除ができなくて、ホコリが溜まるでしょう。ホコリが溜まると、A君や家族が病気になりやすくなるから、困るんだよね。片付けに協力してもらえないだろうか。」

A「いいよ」

母「じゃあお母さんと一緒に、ぱっと片付けられる方法を考えよう。」

 

 子どもが心の奥底から親に対して願っているのは、自分の存在を、無条件でそのまま受け入れてもらえることです。それが叶ったら、次はある程度自分でできるようになるまで、うまく導いてもらうことです。この2つだけなのです。

 でも親の力だけでは難しいこともあります。学校と協力関係を築いて取り組むのが良いと思います。スクールカウンセラーもまた、そのお手伝いをさせていただきたいと願っています。