スクールカウンセラーだより from 一心塾

スクールカウンセラーとして勤務している学校で発行している便りです。

将来の夢は?・・・と聞かれても

 自分の中に何となく存在している将来への想いを整理してまとめ上げて、最終的に「私はこれになりたい」と言うことは、非常に大変なことです。もちろん早いうちから「自分は(例えば)看護師になるんだ」と堅く決めている人もいるでしょう。そういう人は迷いが少なく、勉強にも集中できるかもしれません。しかし大多数の人は何になって良いのかわからなくて、迷ったり悩んだりすることにエネルギーを使って、何となくだらだらしてしまうものです。「何になりたいかわからないけど、とりあえず勉強しておこう」という気持ちにはなかなかなれないのが普通です。心はそう便利にはできていないのです。

 しかし迷ったり悩んだりするのは、何か心の中に、明確ではないけど、将来の自分像に対する期待があるからではないでしょうか。それをどうやって明確にしていったらいいのでしょう。私は、しっかり迷ったり悩んだりする以外に方法はないと思います。でもそのときに傍にいて、焦らせることなく、意見を押しつけることなく、聴いてくれる人がいるとずいぶん考えが進むものです。

 まだまとまっていない断片的な想いを、そのまま受け止めてあげることで、次第に話し手の心はまとまってきます。

 大人は子どもに対して答えだけを求め過ぎる傾向があります。「何になりたいの?」「ああ、それならあの高校に行けばいいわ。頑張りなさい」これでは何の援助にもなりません。本当の援助は“傍にいる”ことだけで良いのだと思います。