スクールカウンセラーだより from 一心塾

スクールカウンセラーとして勤務している学校で発行している便りです。

役割を持つこと

 

 40才も半ばになり、だんだん考えることがおじさん臭くなってきたかもしれないとふと自分をふり返ることがあります。
 家庭とは、子育てとは、と大上段に構えたがるようになり、「こうあるべきだ」という思考にはまりつつあることに多少危惧も感じます。
 「世の中には、こうでなければならない、ということは何もない」というラジカルな考えに30代でたどり着いたのですが、カウンセリングに従事するようになってからは「ある程度枠組みがなければ、かえって人は自由になれない」と思うようになりました。
 それで最近は「家庭においては、子どもに役割を与えましょう。」などとよく言っています。
 昔に比べて子どもが家事の手伝いをする必要性が減ってきて、それによって子どもはただ“世話をされるだけの存在”になってきていると思います。つまり依存的人間関係から脱皮できず、友人関係も「お互いに甘えられるかどうか」という視点から相手を選ぶようになります。
 もちろん「何か役割を持たせなきゃ」と思っておられる親さんは多いですが、世の中がそれに逆行しているのでうまく行かないことが多いのです。うまく行かせるためにはずいぶん工夫が必要です。高圧的、一方的に強制するのは工夫とはいいません。それをやっていると手痛いしっぺ返しがあります。
 役割を自覚することと自立、自信は大きく関係しています。役割があるから社会の一員となれますし、社会の一員だから社会の中にあって安心していられるのです。ただ役割も多岐に渡っていて、「ただ存在している」だけでもそれはそれで役割です。もしそのことを真に自覚できたならば。
 依存的人間関係から脱皮できないと学校という社会や、本物の社会への適応が難しくなります。10~30代の2%程度が現在引きこもり状態にあるのではないかと推計も出ていて、末恐ろしいことです。
 しかし、もしそのような状態になったとしたら、そのときは「世の中は、こうでなければならない、ということは何もない」という発想が必要になるのかなと書きながら改めて思います。