スクールカウンセラーだより from 一心塾

スクールカウンセラーとして勤務している学校で発行している便りです。

心の傷をいやす その2「謝ること」

 

 前回、トラウマについて述べたところ、私の勤務する各学校での相談件数がずいぶん増えました。トラウマに苦しんでいる人はやはり多いのだなあと改めて実感した次第です。また私自身もトラウマについて調べたり考えたりすることが最近は多くなりました。今回は「その2」として、トラウマについてもう少し述べてみたいと思います。

乳幼児は身体の抵抗力も弱いですが、心もまったく無防備です。ですから大なり小なり、子どもの心は家庭で傷つくことが多いようです。その極端な例が虐待やネグレクト(子どもの世話をしない)ですが、もちろんそこまででなくても、例えば夫婦が不仲であったり、祖父母と夫婦が不仲であれば、それは子どもにとってトラウマになります。家庭が安心していられるかどうかということは、子どもにとっては重大なことなのです。

また子どもが夜中に目を覚ましたときに、お母さんが隣にいなくて、不安になって家中を泣きながら探し回っても見つからないとしたら、子どもはお母さんに裏切られたと思うことでしょう。実際はちょっとコンビニに買い物に行っていただけだとしても、「裏切られた」と思い込むことでひどく傷つきます。兄弟で比較されたり、できないことを無理にやらされたりしても傷つくでしょう。

トラウマがあると、元気がでなかったり、自己表現したくなかったり、なぜか恐怖感があったり、人の痛みを感じられなかったり、攻撃的になったりします。また自分を傷つけたくなることもあります。そんなふうにして本当は自分が傷ついていることをわかってもらいたいのです。

しかし親としては子どもを叱りながらでも躾をしなくてはなりませんし、傷つけることを恐れてばかりいるわけにも行きません。外で遊べばひざ小僧を擦りむくように、子どもは傷つきながら育って行くものなのかもしれません。

ただ、傷つけてしまったならきちんと謝ることが最も重要ではないでしょうか。謝ることで傷はずいぶん軽くなります。子どもの場合、親に謝ってもらいたいことがいろいろあるのではないかと、最近私は思っています。

皆さんも経験があると思います。とにかく相手に謝って欲しいと思うことが。しかしそれを口に出せないまま、しこりになっていることも多いでしょう。また、謝らなくちゃと思いながら、チャンスを逃してそのままになって、そのうち忘れてしまっていることも多いでしょう。でも傷ついた側はいつまでも覚えているものです。

佐賀のがばいばあちゃん』は「ありがとうが言えれば天才だ」とおっしゃったようですが、「すまなかった、ごめんなさい」が心から言えたら、これは大天才かもしれません。世の中は今の3倍くらい明るくなるでしょうね。特に親が子に対して、夫が妻に対して、上司が部下に対して、先輩が後輩に対して、先生が生徒に対して。心が軽くなるような「謝られ方」を体験した人は、きっと他の人に対して良い謝り方ができることでしょう。