スクールカウンセラーだより from 一心塾

スクールカウンセラーとして勤務している学校で発行している便りです。

子育て川柳〜受験生編〜

 昨日は某中学校の3年生の保護者対象に「受験生の親の心構え」についてお話しさせていただきました。去年に引き続き今年も川柳仕立てです。

十四才 むかし元服 いま受験

 14才くらいに武家の子どもは「元服(げんぷく)」といって大人になる儀式をしたそうですね。髷を結って刀を差して・・・ここからは大人として扱われるということです。
 子ども扱いすれば子どもはいつまでも子どもで、自分で責任を取ることをしないでしょうが、大人扱いすれば自然に自己責任で行動するようになるでしょう。受験というのは自分で進路を決めて、自分で勉強して、ある意味大人になるための儀式的意味合いはあると思います。これを契機に親の皆さんも子どもへの干渉を控えて、わが子を「大人」として扱ってあげたらよいのではないでしょうか。

言わなけりゃ なんにもしない だから言う

 大人扱いしたくても、いちいち「起きろー」とか「宿題やれー」と言わなければうちの子はやらないんですよぉ、という声が聞こえてきそうです。でもだいたい「いまやろうと思ってたのに、やる気がなくなった」なんて言われてしまうわけです。うまく行かないことは、早めにあきらめた方がいいですよ。

やらぬなら やるまで待とう ゆっくりと

 ゆっくりでーんと構えて見たいものですが、でもつい言ってしまうでしょう。例えば「がんばって」。

「がんばって」 その一言に 腹が立つ

 もう何て声をかけていいのかわからなくなってきました。

「くそばばあ」子どもは嘘をつきません

 言われたことないですか?「親に向かって何てこというの!!」と逆上してませんか?でも「くそばばあ」は子どもの正直な気持ちなのです。

言わずとも わかって欲しい ほっといて

 気持ちを察して欲しい、言わなくてもわかって欲しいというのが子どもの切ない願いなのです。「言わなきゃわかるわけないでしょ、ちゃんと言いなさいよ」と来ますか?すると「だから、ほっといてって言ってるでしょ!!」とカウンターパンチが来きます。ここは察するしかありません。そして見守る。

待つ力 信じる力 親ぢから

 待つのは忍耐力です。そして本当に子どものことを信じていられるなら待つことができます。信じていないから干渉したくなるのではないでしょうか。植物の成長なら誰でも待つことができるでしょう。春になれば花ひらくことがわかっているから、それを信じているから待てるのです。

信じれば 待つ間も楽しき 変化あり

 もし信じることができたなら、待つのはそれほど苦ではありません。ちょっとした変化が見て取れるようになるからです。最近笑顔が増えたとか、言葉数が多くなったとか、そんなことを楽しんだら良いわけです。また待てない理由として「子どもに期待する気持ち」に親自身気づいていないということもあります。

期待する 親の想いが 子に重い

 親が子どもに期待して何が悪い。そうです。親は子どもに期待するものです。ちっとも悪くありません。子どもは親の期待に健気に応えようとするところがありますし、それによってがんばる方向性を見出してもいます。しかしその分、期待通りにできそうにないと重く感じてしまうのです。
 親の期待には言葉で明示されているものと雰囲気で非言語的に伝わっているものがあります。明示されているものには「嫌だ」と言葉で反発のしようもありますが、非言語的に伝わってくるものにはどう反発のしようもなくて重く感じてしまいやすいところがあります。例えば「できるだけ親に面倒掛けないでくれ、不安にさせないでくれ」と親も自分自身気づかないまま期待していることがよくあります。この場合子どもは悩みを相談できないでしょう。または返って心配掛けることばかり引き起こすかもしれません。

安心を子に求めたい親心

 できれば賢く、健康で、やさしく、友だちもいっぱいに育って欲しいわけですが、わが子のそうでない部分を否定的に見たところで良い変化が生じるわけではありません。むしろ逆効果です。

諦めて いまのこのまま 受け入れる

 そうすることで良い変化が生まれてくると私は信じています。

つきあいの難きをうまく手なずけて 子も自らとやっとつきあう

 つきあい方の難しい子は、その子自身自分とのつきあいに難しさを感じているものです。そんな子とうまく付き合う方法を見出したなら、子どもも自分自身とうまくつきあえるようになるでしょう。その子のそのままを受け入れることで道は開けます。